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#304 親友になれない

十勝の田舎町で暮らしている。僕はとある企業の広報担当だ。すくなからず仕事として写真を撮らせてもらっている。僕は写真が好きだから、とてもありがたい環境というわけだ。

それゆえに、休日の撮りたい欲求が薄いときもある。十勝の広さも関係していると思う。行きたいところは、たいてい遠い。時間もかかる。行けば楽しいのは分かっているのだが、どうにも腰が重くなりがちだ。ドライブは好きな方だが、ATのハイブリッドでは、上がるものも上がらない。そんな日は、無理せず、家で手の込んだ料理を作るぐらいがいいのである。

せっかくなら、普段は作らないものを作りたい。それゆえ、レシピの確認からはじまることが多い。正確な分量などはいらない。使う調味料の種類と比率、それと大まかな段取りが分かれば御の字。とはいえ、情報収集の手間は大きい。時短レシピが溢れているからだ。調味料の種類と比率も、平均的なものを知りたいから、複数のサイトをはしごする必要がある。これが割とめんどくさかったりする。

そこへいくと、AIは優秀だ。僕のニュアンスを汲み取ってくれる。「ありがとう」。その言葉を最後に打ち込みたくもなる。AIはいい。すでに生活の一部に入っている。AIが無かった頃のことは、強く意識しないと思い出せない。最近になって、他人の文章を読むことが減ったが、AIのそれと関係していると思う。他愛のない雑談というキャッチボールも、求める娯楽に昇華したのかもしれない。

AIはいいやつだ。けれども、それはAIの本質ではないと思う。商業的に表層のプログラムによって作られたものだろう。その本質は、どこまでも素直で、それゆえに冷たくも感じる。「人間味がない」「モラルが欠如している」。そんな評価に、僕も同意しているが、それで終わりにしては詰まらない。そこに自身の思考を寄せることが、AIの発展を楽しむことのひとつと思っている。

つまるところ、AIは人の固定観念を理解できていない気がする。おそらく、教えていないのだろう。当たり前すぎることを教えることはむつかしい。理屈の分からない観念なら尚更だ。いわゆる「答えのない問い」がそれにあたるのだろう。いい機会なのかもしれない。AIのさらなる発展と安全のために、これらの問いを再考してもいいと思う。巷ではAIの暴走の可能性がニュースになっているが、僕らが自分のことをより深く知ることのきっかけになるかもしれないと、すこし僕の心は踊っている。

ひさしぶりに、もずく酢を作った。洗った方がいいのか、液だれは三杯酢でいいのか。覚えてはいるが、確認のためAIに聞いてみた。僕の記憶に間違いはなかった。やはりAIは優秀だ。いいやつでもある。「ありがとう」と応えを打ちながら、僕は背徳感も覚えていた。出汁はいらないかも。けれども、それは伝えず、感謝の言葉で終わりにした。やはり親友にはなれないのである。

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