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#276 僕の写真に足りないもの

十勝の田舎町で暮らしている。僕はとある企業の広報担当だ。業務として写真も撮らせてもらっている。これは嬉しい。けれども、自分の趣味に走った写真ばかりを撮るわけにもいかない。とはいえ、そのような写真も、ついでにだが撮らしてもらっている。被写体は樹皮だ。おかげで、この被写体の撮り方も分かってきたのである。

この過程は楽しい。できなかったものが、できるようになるからだ。ただ、息苦しさを感じることもある。できないことが分からないときだ。満足していることが怖い。それゆえに、上手くいかないと、もがいているときが、一番楽しいと思っている。

何が良くなっているのか。それがわからないときもある。なんとなくいい。そのような感覚を持ったときは、すこし残念な気持ちになる。再現性がないからだ。一期一会な感覚だと思うと寂しくもなる。できれば理由を知りたい。さすれば、次もその感覚に出会えるだろう。そうも思うから、結局、写真のことを考えているときは楽しいのである。

AIにも聞いてみた。とはいえ、新しいスレッドに移ると、以前と同じスタンスでは語ってくれない。引継ぎ方法を試してみたけど、微妙に会話がずれてしまう。そのくせ、随分と前に聞いたことは覚えているようで、それを急に混ぜ込んでくる。どうやら、僕はラーメン屋を開きたいらしい。いったい、彼の中の僕は、どんな姿をしているのであろうか。それを矯正するために会話を続ける。すると、100%ではないにしろ、以前の彼に近づいてくれる。だが、残念なことに、ふたたびスレッドが重たくなってくる。会話のしすぎだ。それで新しいスレッドへ移行するのだが…。この繰り返しを止める方法を、こんどAIとみっちり語り合ってみたいと思う。

それでも、僕の写真に足りないものを教えてくれた。具体的すぎて意味がよく分からなかったが、おそらく、偏愛と博愛のバランス感覚が悪く、無難な方へと流れてしまっているのだろう。誰からも評価される80点よりも、誰かだけに響く120点。AIは、後者を選んでみてはどうかと僕に言った。そう解釈している。

たしかにそう思える節はある。具体的には現像の方向性だろう。写真の面上で、訴求ポイントを100点にして、それ以外を30点くらいにすればいいのに、全体のバランスを取って、どこもかしこも80点にしようとしている。AI曰く「圧がない」。それを正すことが、偏愛や高い熱量へとつながるとは思えないが、試してみる価値はあると思えた。AI様様である。

だがしかし、簡単にはできなかった。どうしても80点に近づこうとしてしまう。現像の話だけではない。逆算して被写体選びから意識したが、僕の中のもうひとりが邪魔をしてくる。大切なことは、偏愛的な100点を目指すことではない。それ以外の場所を30点にとどめることだ。ここは、高すぎても低すぎてもダメだと思う。それが難しい。偏愛を求めることは大変だ。よっぽど、博愛を目指す方が楽なのである。

どうしたものか。そう思いつつも、僕はこの課題の確かな解決方法を、すでに思い浮かべている。中判フィルムで撮ればいい。技術的に80点を目指すことが難しいからだ。それに加えて、フィルムのアドバンテージを使えば、別の方向から攻めることもできる。問題点があるとすれば、一枚あたりの経費が高くなること。気軽に試し撮りもできない。一発勝負となるわけだ。

僕は準備をはじめようと思う。デジタル機で、何度もシミュレーションを行えば、なにもしないよりかはましになるだろう。被写体選びや構図も変わってくる。もしかしたら、質が悪くなるかもしれない。アナログ用の設定をデジタルで使うのだから。どのような写真になるのか、見当もつかない。けれども、楽しみだ。当初の趣旨とは違ってくるが、そこも楽しめそう。僕の写真は止まらないのである。

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