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タモツの日記
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#269 急がなければ悪くない

風呂場の排水口が壊れた。もとい、排水口を覆っていた金属製の丸目皿が割れてしまった。交換しなくてはならない。とはいえ、業者を呼ぶほどではないだろう。割れた丸目皿を持って、ホームセンターにでも行けば、同じものを買えると思う。ただ、町の小さなホームセンターでは置いてないかもしれない。そんなに需要がある品とは思えないからだ。ならば、帯広まで行く必要があるだろう。パワーコメリの資材館なら、確実に置いてそうだ。

店内に入り、探し物はすぐに見つかった。水回りの品が揃っているコーナー。丸目皿が大量に並べられている。どうやら、サイズが豊富なようだ。割れた丸目皿を持ってきてよかった。数ミリ単位の違いは、記憶できないのである。実際に、商品と重ね合わせて選んだ。ひとつ1,000円程度で、想定よりも高かったが、ミッションコンプリートなのである。

お店を出て、車までは遠かった。ここは十勝。駐車場も広い。大きなホームセンターだから尚更だ。国道を挟んだ向こう側には、広大な畑が広がっている。僕は、その駐車場の隅に車を停めた。ぽつりと。除雪で出来た雪山の麓に。なんなら、すこしタイヤは乗り上げている。

僕はお店のドアから遠いところに車を停めるのが好きだ。理由は、もらい事故の確率が低いから。けれども、そのような理由がなかったとしても、僕はお店のドアから遠いところに車を停めるだろう。実際のところは、何も考えていない。理由も後付けだと思っている。なんとなく、そこが気に入っているのだ。居心地もいい。これはエレベータ内の場所取りにも似ている。おそらく、僕はパーソナルスペースが広いのであろう。知らない誰かとの距離は遠いほどいい。好みの住む場所にも似ているのかもしれない。すみっこがベスト。これはもう、僕の性でしかないのである。

お店のドアに近いところに停めたがる人は、運転初心者か女性が多いという話を、SNSか何かで見かけたことがある。そんな話を、ふーんと思いつつも、懐疑的な目で見てしまうのは、僕がお店のドアから遠くに停めたがる理由と一致しないからだ。理屈は分かっている。おそらく、駐車場内での事故率には場所によって明らかな差があるのだろう。それと歩く距離の苦痛を比べれば、遠くに停めることは合理的と思える。歩く距離も、お店の中での歩く距離と合わせれば、誤差範囲となるからだ。

けれども、駐車場内での事故率ではなく、すべての場所での事故率と比べればどうだろう。気にするほどの差はなくなるのではないかと思っている。きっと、お店のドアに近いところに停めている人の中には、そこまで計算している人もいるだろう。本当のところは分からない。実際は「運」の要素が大きいのではないかと。確率論というものは、そういうものだと思っている。

それよりも、深く考えずに自分の停めたいところに停める方が健全だ。とはいえ、人は自分の行動に理由を付けたくなる生物だ。正当でありたいと思う気持ちが強い。他者が自分とは違う正当性をアピールしはじめれば黙ってもいられない。静かな争いもはじまるというわけだ。

どうしたものか。もちろん、僕の心の中にもその火種はある。だが、それを表には出さないようにもしている。人との争いを避けるためではない。そんなくだらない理由で、自分の心を揺らしたくはないからだ。お店のドアから車までの散歩。急がなければ悪くない時間がそこにあるというわけだ。

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