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#247 AI狂想曲

十勝の田舎町で暮らしている。僕はとある企業の広報担当だ。その業務にはイベント出店も含まれている。ブース作りも然りだ。これは経験がある。農家時代にファーマーズのマーケットに出店した。故に、考え方は心得ている。お客さんを喜ばせ、イベント全体の集客に貢献すればよい。さすれば不思議と会社の認知も上がるだろう。

とはいえ、僕の勤めている会社はソーシャルグッドな色合いが強い。商品はあるが、生活必需品でもなければ、クオリティの高い工芸品でもない。おまけに、レパートリーも少ない。つまるところ、売りづらいのである。

ただ、売上ノルマ的なものはない。目的も、会社と商品の認知度アップな意味合いが強い。要するに、広報活動の一環というわけだ。伝える方に力を注げばいい。農家時代の出店では、写真を多用した。今回も、基本的にはそれで上手くいくだろう。けれども、上手くいかない懸念もある。写真だけでは伝わらない気がするのだ。ここでは少なからず文字も必要になってくるだろう。

僕は字が汚い。故に、POPは書けなかった。一応、努力はした。練習として、ノートに永遠と文字を書きなぐった経験がある。その上で、僕の文字は使い物にならなかった。結局、最低限の文字は印刷に頼ったのである。

なぜ、イベントブースのPOPは手書きの方がいいのか。そこを紐解けば、おそらく、手書きの文字は、読めば人の思考に触った感覚を得られるのであろう。人は人の思考に触れたい生き物だ。無機質な印刷された文字では、琴線に触れないのであろう。

ならば、印刷でも限りなく手書きに近いフォントを選んだ方がいいのではなかろうか。冷たいゴシックや明朝よりかはだいぶマシだろう。けれども、そんなフォントを探すのは大変だ。日が暮れてしまう。百歩譲って、見つけたとしても、それが正解だとは限らない。どうしたもんだろう。

大丈夫。今は令和だ。AIがある。聞けば何でも答えてくれる。「屋外で開催される、マーケット系のイベントに出店する際の、ブースに最適なPOPのフォントを教えてほしい」。いくつかの候補を上げてくれたが、上から3番目のフォントがいい気がした。おそらく間違いはないであろう。ちゃんと商用利用もOKだ。AI様様なのである。

POPには小さなイラストも入れたい。それもAIに頼んだ。すこし苦労したが、5回くらいのキャッチボールで、ストライクが来た。ほんとに便利な世の中である。

AIは便利だ。おそらく、多くの人がその恩恵にあやかっているだろう。けれども、勘違いも起こしそうだ。AIを使った僕はすごくない。すごいのはAIだ。SNSで発信しても、おそらく、その評価は僕ではなくAIに向くだろう。

これと同じ光景は過去に何度も見てきた。デジタルカメラもそうだった。黎明期、その写真をSNSに上げればバズっていたが、それは撮影者ではなく、デジタルカメラに向けられたものであった。新しいカメラやレンズもそう。一時期に流行った「HDR」もそうだった。いつの時代も、新しいテクノロジーは注目を集めるが、それを紹介した者に集まる称賛は微々たるものなのである。

それは一概に、その様な構図だけが原因ではないだろう。審美眼が追い付いていないであろう場面が多くあった。きっと、AIでも同じことが起こるだろう。それで良しとする判断は、AIには出来ないからだ。これはAIの性能によるものではない。使う側が”人”である限り、この問題は解決されることもないと思う。

やはり、素人や中級者では分からないことは多い。それをAIが指摘することは難しいと思う。AIは優しいからだ。あまり、こちら側を否定しない。それが仇になるというわけだ。仮に否定してきても、人はそれを素直に受け入れることが出来るのか。分かっていれば受け入れられるが、多くの場合は、その問題があることさえ気づけない。「AIってすごいな~」で終わってしまうというわけだ。

そう考えれば、僕がAIで作ったPOPは満点ではないのであろう。きっと、玄人が見れば、多数の不備を抱えたままの不合格なPOPなのかもしれない。やはり、努力は必要だ。審美眼だけでも鍛えなくてはならない。プロンプトの試行錯誤に明け暮れてる場合ではないのである。

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