





十勝の田舎町で暮らしている。僕はとある企業の広報担当だ。担当というだけで専任ではない。だからであろうか、給料も良いとは言えない。それは昔からだ。おかげで、料理の腕もそこそこ上がったと思う。スーパーでの買い方も然りだ。賢いことはもちろんのこと、はやいと言われたことも。制約は人を成長させるというが、本当にそうだと思う。
円安の影響なのか、小麦製品の価格も上がり、乾燥パスタも値上がりしたが、それでも、まだまだ安い部類の食材だと思う。早い、安い、旨いの三拍子も揃うだろう。
パスタは、スーパーの品揃えを見ながらでも、その種類を決められるから、本当に便利な料理だと思う。その日も、売り場を見ながら、パスタの完成形を模索していた。楽しいひとときだった。
店に入ると、まずは野菜売り場。そこは品揃えと価格のチェックだけで素通り。この日は、動物性蛋白をメインにしたかったからだ。それでも、次の魚売り場の干物や刺身では、僕の足を止めることはできなかった。目を奪ったのは、刻まれた北寄貝。量と価格も充分だ。予算的にも余裕があるから、もうすこし具材も足せる。ベビーホタテ、解凍あさり、細切れタコ。端物なのか価格も安い。いいものが作れそう。一応、次の肉売り場もチェックしたが、僕の判断は正しかったようだ。
たしか、家には乾燥パスタとホールトマト缶があったはず。足りないのはニンニクくらい。それを買いに野菜売り場へ戻った。これで、この日の買い物は終了。あとは家に帰って作るだけだ。
フライパンで刻んだニンニクを弱火で炒めていく。僕はニンニクが好きだ。十勝産のいいものを使っている。香りが濃い。故に使用量は少なくて済む。価格は高いが、一品の材料費は、あまり変わらないのである。
ニンニクの香りが出たら、具を加えて炒めていく。火加減は中火。ここでも、しっかりと香りを出していくというわけだ。いい具合になったら、ホールトマトを加え、トマトの形を潰して煮詰めていく。赤ワインを入れたいところだが、この日は切らしてたから、白ワインで代用。日本酒を少しだけ加えて、コハク酸の旨味を足してみた。バジルは庭に生えてたものを多めに。あとは塩を入れて、顆粒の昆布だしも加える。仕上げにバターを加えればソースの完成だ。塩ゆでしたロングパスタと合わせて、パルメジャーノ・レッジャーノを上から降らせれば、ぺスカトーレの完成である。
おいしい。間違いない。王道のパスタだ。海老や烏賊を入れたいところだったが、端物の貝が主体のペスカトーレも悪くない。ボンゴレ・ロッソと何が違うのだろうかと、そんな疑問も生まれてくるが、それは野暮だろう。タコも入っている。なにより、作者がそうと言えばそうなのだ。
端物ペスカトーレ。新たに通うこととなったスーパーが導いてくれた料理。こんな事があるから、暮らしの変化は辞められないのである。