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タモツの日記
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#236 はったりを越えてゆけ

十勝の田舎町で暮らしている。僕はとある企業の広報担当だ。仕事場は家から遠いが、皆が働いている本社はもっと遠い。つまりは、僕だけが離れた事業所に勤めている。故に、基本的には“ぼっち“というわけだ。

けれども、環境はいい。趣のある昭和感が残った施設が僕の現場。その一角に新設された事務所は、3畳ながらも、間接照明のある“おしゃれ空間“となっている。

もちろん、エアコンにトイレも完備だ。小型だが冷蔵庫もある。来客用のレギュラーコーヒーセットも。家具は、銘木の机に、アーロン的なチェア。置かれているデスクトップPCのスペックは高い。社内でダントツの性能を誇っている。そこが僕の居場所。怖いくらいの良い環境というわけだ。

基本的にはぼっちだが、人の往来はゼロではない。事業所の現場仕事は、複数人でまわすことも多いからだ。その日は独りを感じることもない。外回りのついでに、ふらっと寄ってくれる人もいる。お客さんも、たまにだが訪れてくれる。先日も、そんな方がいらしてくれた。聞けば、昔ながらのお客さんのようだ。けれども、商売の話はしない。たあいのない雑談をしただけだった。

けれども、雑談が盛り上がってしまった。ちょっと、踏み込みすぎたかもしれない。ラーメン屋をしている方だった。来店に誘われてしまった。約束はしなかったが、タイミングがいいときに行こうと思う。店のオブジェを撮りにだ。さすれば、僕もオブジェを作らるようになるかもしれない。ずぶの素人なのに。

すこし、はったりをかました節もある。とはいえ、嘘はついてはいない。好奇心を盛りすぎた。オブジェは作りたいが、作れる自信などない。それなのに、実物を見れば作れるという流れに身を任せてしまったのである。

思い返せば、はったりは僕の十八番だった。何度もかました過去がある。それでも大きな失敗に繋がらなかったのは、100%の嘘ではなかったからだ。構築できなかった自信を考慮せずに、見切り発車をしただけ。そう考えれば、僕がはったりと思っていたものも、他人から見れば、過度な謙遜を取り払った言動ぐらいにしか映っていなかったのかもしれない。僕だけがはったりと思えるくらいが丁度よかったのだ。

そして、今の会社へ入るときも、僕ははったりをかましている。やはり、嘘はついていない。なんなら、すべてを話している。その上で僕は言った。「任せてください」と。

動画編集の経験は無かったが、おそらく、はじめれば、できる人になれるだろう。自信はあった。いや、自信というよりは、経験則による確率をみての言葉だった。

先日、はじめての編集動画をテスト公開した。それくらいのクオリティに達したからだ。あの日の「任せてください」の言葉も、すこしは消化できたと思う。高性能なPCも浮かばれただろう。僕のそれはもう、はったりではないのかもしれない。きっと、立派なオブジェも作れるようになるだろう。ラーメンを食べに行くのが楽しみなのである。

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