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タモツの日記
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#131 ボケられた

十勝の田舎町で暮らしている。僕は地域おこし協力隊だ。任務は自身の就農研修と所属する生産組合の活性化。今は農家さんのお手伝いをしている。朝から晩まで、長さ90cmの木を運んでいるというわけだ。

だがしかし、地域おこし協力隊の任務は多岐にわたる。町民の困り事の解決も僕の仕事だ。上を通しての依頼があれば、どこへでも行くのである。

その日は牧草畑に招集された。深い目的は分からないが、畑の小石を拾って外へ捨てる作業をする。多くの人が参加していた。ただ地域おこし協力隊は僕1人。他はすべておじいちゃんだった。

小石は熊手で集める。それをスコップでバケツへ。それを砂利道へ。人海戦術。僕はギリギリ30代だ。このチームの中では若い。田舎の青年とは60代。そう考えれば、僕は赤子だ。ここに来て若返ってしまった。故に頑張らないといけない。まわりより3倍は速く動いておいた。けれどもアラフォー。肉体的には初老。大変疲れたのである。

別の日には、ハウスの解体も任された。現場には脚立が用意されている。これでハウスの金具を外してほしいということなのだろう。依頼主はいなかった。ワンオペである。手探りで作業を進めるも、途中でお手上げとなってしまった。天井部の金具は、用意された脚立では届かないのである。

『タモツは高いところが苦手』。後日、そんな噂がたった。田舎は狭いのである。おかげでその後、僕は高いところに登らずにすんだ。後日、ハウスの解体は依頼主と2人で行うことになった。

「押さえてろよ、絶対に押さえてろよ」。僕は脚立を押さえる係だ。依頼主が脚立の天板で背伸びをしている。僕は迷った。押すなよ、押すなよ、は押せの意。それはテレビが教えてくれたお笑いの基本。さすれば、脚立から手を離すことが正解なのだろうか。難しいのである。

別日にはチェーンソーの使い方を教わった。同じ依頼主である。農園にある倉庫の裏の木を切る。説明を受けた。刃を入れる場所を考えないと、刃が動かなくなってしまう。切り込みを境に、上の木と下の木で真剣白刃取り状態になるそうだ。

他にもいろいろと説明をしてから、依頼主は刃を木に当てていった。「ちょっ、やべっ、挟まった、お前ちょっと木に登れ、上から幹を押さえろ、ちがっ、ひっぱれ、あれ?、」。ぐだぐだである。僕は違うと思いつつも、言われた通りに動いた。めんどくさいからだ。悪戦苦闘は続く。その後、なんとか木は倒れた。切り口はぐちゃぐちゃだった。

「こんな感じだ、次、お前、やってみろ」。依頼主はへこたれてなかった。「やれるか」。僕は心の中でツッコんだ。実際に口に出した言葉は「僕は大丈夫です。ありがとうございました」。僕はそそくさと現場から離脱したのである。

田舎はおもしろい。真面目な人もいれば、アホな人もいる。あれはお笑いのボケだったのだろうか。その答えは未だに謎のままだ。他にもいろいろな人がいた。平気で嘘をつく人もいる。話が通じず怒鳴り散らす人もいた。もちろん、いい人もいる。基本的には皆そうだ。心地よい気の使い合いがある。

結局のところ、田舎も都会も同じだ。人付き合いは運の要素が大きい。僕は元短期転勤族だ。仕事場はもちろん、ご近所さんとの付き合い経験も多い。なかには変な人もいた。だがそれは地域と関係ない。それはもう運なのだ。

そして今の僕の身近な人は、皆が常識ある人。僕の運もすてたものではないのである。

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