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タモツの日記
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#132 冬が来る

十勝の田舎町で暮らしている。僕は地域おこし協力隊だ。任務は自身の就農研修と、所属する生産組合の活性化。季節は秋。山に入り、間伐なども行っている。

チェーンソーの扱いは難しかった。すぐに切れなくなる。刃の研ぎが甘いのだ。教わった通りに行っているつもりだが、研げていないのだろう。故に伐採にも時間がかかる。これは長期にわたる課題となった。

チェーンソーの刃を研ぐことは『目立て』と呼ばれている。チェーンに付いている小さな刃を、棒ヤスリでひとつひとつ研いでいくのだ。これを会得するには回数が必要だろう。故に僕は研ぎまくった。給油のたびに研ぐ。刃はみるみるうちに短くなった。新品に交換してもまた研ぎまくったのである。

おかげですこしはマシになったと思う。木を切るスピードも上がった。だが、親方さんには勝てない。音で分かる。エンジンを回している時間が短い。エンジンを回していない時間も短い。すべてが異次元であった。

「切れねーなー」。親方さんは僕のチェーンソーを使うなり、そう言った。遠回しに採点してくれてるようだった。この親方さんと仕事をするのははじめてだ。親方さんは林業のプロでもある。ハスクバーナのチェーンソーは気持ちよさそうに咆哮をあげていた。

だが、林業の親方さん曰く、僕のスチールのチェーンソーの方が、音はいいらしい。たしかに甲高い音でかっこいい。気持ちも上がる。故に僕のチェーンソーを使うことが多いのだが、毎回「切れねーなー」の言葉と共に研いでもらっていた。そして、その言葉を無くすことが僕の直近の目標となっていた。

間伐の時期は、葉が落ちてから雪が積もるまで。本当は冬の間が伐倒の時期ではあるのだが、林道の除雪費用を考えると、雪が積もりだしたら終わり。それは、およそ12月の中旬頃だという。

とはいえ11月の頭頃から雪は降りはじめていた。親方さん曰く、3回目の積雪が根雪となるらしい。故に僕は雪の降る中でも木を切っていた。目標の本数を狙うことはもちろん、木を切る作業が楽しかったのだ。

雪が積もると熊笹は寝る。すると森の中は移動しやすくなった。木を切る効率も上がる。そして3回目の積雪がやって来た。1,2回目と比べると量が多い。町のスキー場もオープンした。僕の軽トラは4WDでスーパースローやデフロック機構も付いてはいるが、スタックしたら脱出は難しいだろう。この年の伐採は終わったのである。

気がつけば街の中も雪景色となっていた。伐採が忙しくて、そんなことを思う暇もなかったわけだ。

僕の仕事内容も変わった。栽培ハウス内のルーチンワークに『薪ストーブの管理』も含まれた。これはおもしろい。炎は見ているだけで癒される。ついつい薪をくべたり何かと手を加えたくなる。

秋と比べると、若干楽になった冬の仕事。外は寒いが中は暖かい。通い慣れた栽培ハウスだが、愛着も強くなった気がする。十勝の冬は厳しいと聞いていたが、これはこれで楽しめそうだ。

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