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#130 町に引きこもった

十勝の田舎町で暮らしている。僕は地域おこし協力隊だ。任務は自身の就農研修と、所属する生産組合の活性化。今は農家さんの作業を手伝いながら技術を学んでいる。

僕は写真が好きだ。そのために転職した節もある。けれども仕事は忙しい。3年後のことを考えれば、平日の夜と朝はもちろん、土日祝日も無駄にはできない。準備しておけることは、いくらでもあるだろう。そう考えれば、写真を撮る時間はないのである。

けれどもそれでは本末転倒。故に1年目は遊ぶと決めていた。とはいえ準備も怠らない。優先順位をすこしだけ変えただけだ。写真のそれを優先させたのである。

町の隅々を撮りはじめた。時間は朝方。軽トラで行けるところまで行く。野生動物にも慣れた。ヒグマには会うことは無いが、エゾシカと出会っても驚くことは無くなった。

僕のカメラは67中判フィルム機。『とりあえず撮っとく』はできない。1shotが高額だからだ。故に2時間ほど経っても10枚くらいしか撮れない。それでも、いつもよりか撮影ハードルは下げている。すこしでも気に掛かったものは撮っておいた。おかげでボツ写真は多くなったが、そこから得られたものも多かった。

1年目は遊ぶと決めていた。正確に言うと、この期間で写真のレベルアップを図りたい。まだまだ分かっていないことが多いからだ。とにかく無駄打ちが必要。そのための遊ぶ時間というわけだ。

おかげで町の撮影スポットは把握できた。やはりここは十勝だ。パンフレットやWEBには載っていない撮影スポットがある。誰かに教えてもらうより、自分で探した方がいい。もとい、自分で探さないと辿りつけない。そこを僕は見つけられたのである。

西部の牧草地帯、台地上の畑作地帯、山間部の放牧地。この3ポイントで僕好みの写真を撮れる。青空の日も最高だが、濃い霧の日がたまらない。余計なものをすべて隠してくれる。広角レンズでも引き算が可能だ。お気に入りの写真も増えていったのである。

休日には十勝からも出た。久しぶりの美瑛はあいかわらず美しい。青池にも足を運んだ。そこでの写真はお気に入りの一枚にもなった。釧路にも行った。8年前にも訪れたことはあったが、そのときは写真も撮らずに素通り。大きな湿原を撮らなかったことが少し心残りになっていたから、そのリベンジでもある。

もっと北海道を撮りたい気持ちはあるが、それよりも僕の住む町を撮りたいと思えた。どこにも負けていないのである。もちろんバイアスにかかっているとは思うが、それを差し引いてもである。

きっと他の市町村でも探せば知られていない撮影スポットはあるのだろう。僕の住む町が特別だとは思えない。日本の風景は撮り尽くされたと言われているが、そんなことはないと思えた。まだまだ未知のスポットはあるのだ。

僕は引き続き町の写真を撮っていこうと思う。まだまだ未知のスポットがあるかもしれないからだ。それに四季の移り変わりもある。そう思うと楽しみでしょうがない。良い意味で町に引きこもってしまいそうだ。

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