





十勝の田舎町で暮らしている。僕は地域おこし協力隊だ。任務は就農研修と生産組合の活性化。今は主に農家さんの作業を手伝っている。だいぶ仕事にも慣れた。当初は筋肉痛に悩まされていたが、今はさほどでもない。作業スピードも上がったと思う。
生活も落ち着いてきた。田舎暮らしだが、不便さは感じてはいない。住めば都。食に関しても不自由はなかった。正直に言えば、もうすこし期待していた部分もある。だが、それがないだけで普通の暮らしをするには充分だった。
休日にはドライブにも出かけている。もっぱら帯広方面だ。信号のない直線道路を延々と進む。こちらも正直に言えば、運転が暇で物足りない。それでも広い大地を流しているだけで幸せを感じられた。
だがしかし、僕の車はすこし大きかった。仕事で山に入ることもある。悪路を進むには適していない車だった。将来的には軽トラが必要になるだろう。4駆でデフロック機構があるものが望ましい。買うなら中古だが、人気があるので、いつでも買える代物ではない。故に、いいものが見つかり次第買うことに決めていた。
そのときは唐突に来た。価格面でも理想的な車を見つけたのである。お店は札幌近郊にあるので取りに行くことも可能。僕は躊躇せずに購入に踏み切った。
その日は朝早くに家を出た。汽車に乗るためだ。JR線は電化されていない。すべての列車がディーゼル車だった。そして十勝から札幌へは日高山脈を越える必要がある。そこに普通列車は通っていない。すべてが特急列車。だがその区間だけは普通切符で特急に乗れる。僕は節約と興味本位で普通切符で行くことにした。
特急に乗れるのは新得駅から新夕張駅まで。故に新夕張駅で降りる必要があった。降りる者は僕1人。ホームには誰もいない。次の普通列車は1時間待ち。大丈夫。カメラを持ってきた。僕のそれは67中判フィルム機。駅のホームは被写体の宝庫。1時間はあっという間であった。
車のディーラーに着いたのは昼過ぎであった。車の購入手続きは全て済ませてある。この日は引き渡しのみだ。キーを受け取り、簡単な説明を聞いて、ディーラーを後にした。
軽トラの乗り心地は悪いが、我慢できない程ではなかった。運転も問題ない。久しぶりのマニュアル車で楽しかった。しいて悪いところをあげれば、ギア比が低い。加えてワイド。高速走行よりも重たい荷物を運べる仕様だ。考えてもみれば当たり前なのである。
僕はドライブをしながら帰ることにした。ついでに8年前に暮らしていた場所にも行ってみる。ルートは札幌から北上し、岩見沢経由で桂沢湖へ、富良野へ、南富良野へ、そして十勝へ戻った。
そこは何度も通った道。地図もナビも必要ない。頭と体で覚えていた。ひどく懐かしくも感じる。変わったところもあれば、変わっていないところもあった。ほんとうに北海道へ帰って来たのだと、改めて強く感じたのであった。
無事に自宅へ。軽トラも頑張ってくれた。これからは、この車を使うことが多くなるだろう。悪路でも入れる。荷台に乗れば視点も上がる。僕の撮る写真にも良い影響があると思う。またひとつ暮らしが楽しくなった。僕の写真は止まらないのである。