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タモツの日記
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#117 仕事はたのしい

医療系の研究施設で働いている。僕は短期転勤族だ。今の事業所は11ヶ所目。仕事は社員のマネジメントを担当している。担当する社員のうち3人は新社会人だ。故に新人研修も同時に進行中。正直に言うとめんどくさいのである。

3人は個性が豊かだった。通称で表すと、チャラ男、歌子、飛子。チャラ男君はその名の通りチャラかった。だが仕事はできる。責任感も強い。強すぎて困ることもあったくらいだ。喋りも上手い。過度に遜ったりもしないので、皆の代弁者的な存在でもあった。そこらへんの空気読みも上手いのである。

歌子さんもよく喋るが真面目であった。劣等感を感じやすく、それを克服するために頑張りすぎる一面もある。おそらく彼女の中での限界付近で戦っているのだろう。もうすこし手を抜いてもいいと思える場面が多々あった。現場の空気感を強く意識しているのも彼女。故に自然とOJTノートの文字数も多くなった。ちなみに歌が引くほど上手いらしい。

飛子さんは変わっていた。AB型らしい。それを聞いて納得してしまう僕は昭和生まれ。彼女は自分の血液型さえも誇りに思っていた。ちなみに飛行機が好きらしいので、その通称だ。仕事に対する熱量は比べるまでもなく、3人どころか現場で一番に突出していた。昇進したいわけでもなく、認められたいわけでもなく、ただただ自分を成長させたいのであろう。僕の中でのめんどくさい人ランキングも1位の人だった。

きっとブラック労働でも問題ないのだろう。彼女は朝の出社も早かった。オーナーさんから技術を教わっている。このことについては、関係各所の了承済みだ。だが穏やかでないのは歌子さんだった。「私も練習に参加した方がいいですか?」。僕に何度も聞いてくる。

この場合、僕の立場からだと何を言っても『参加した方がいい』と捉えられてしまうだろう。押すなよ、押すなよ、は押せの意。空気感を強く意識する彼女なら、そう捉えても仕方ないと思われた。

結局、僕は飛子さんに強く当たることで問題を収めた。朝練は仕事の評価に一切反映しないこと。それと、僕が朝練には前向きではない姿勢を見せることで、他の人の心配を消すことに努めた。

おかげで、歌子さんをはじめ、皆の心配事は減ったように思われた。飛子さんが朝練をしていても、誰もそわそわしなくなったからだ。僕も一安心。けれども、僕の本心は別のところにあった。

正直に言うと、朝練を希望する彼女をもっと応援してあげたい。やりたいことをやろうとしている人には協力したいのだ。僕も過去に応援してくれた人がいた。とても感謝している。過去にいろいろと問題を解決してきたが、その方法はいつもすこし奇をてらっていた。おそらく協力者や応援者がいなくては成功もしていなかっただろう。その人たちへの恩返しも含めて、若い挑戦者には協力と応援を贈りたいというわけだ。

僕はオーナー側の業務を支援する形で、新たな計画を提案した。それを成立させるためには、僕と飛子さんのスキルが必要になる。提案は受理された。業務の中に朝練の要素のすこしを取り入れたのである。これで、業務時間中のスキル練習が可能となった。もちろん対象はパートを含めた社員のすべてである。

最初はいろいろと問題が起きたが、修正をしながら1ヶ月も進めれば、計画も安定飛行に移った。スキル練習も本作業に比べれば楽なので、文句をいう者もいなかった。

これでよかったのだろうか。仕事って何だろう。おそらくこの問いにぶつかった者も多くいると思う。だがそこは自分で考えてほしい。僕の作ったこの状態も、誰もが思う正解ではない。むしろ不正解という者の方が多いだろう。だが、『仕事はたのしい』だけは求めてもいいと思う。

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