





医療系の研究施設で働いている。僕は短期転勤族だ。今の事業所は10ヶ所目。自転車通勤だが車を保有している。以前は車で通勤していたからだ。
僕の車は4人乗りの5ナンバー。そしてマニュアルミッションである。毎日乗っていたので運転は慣れたものだが、ここ最近はサンデードライバーと化しているので少々不安な部分も。そのため週末は必ず乗るようにしている。
すこしの遠出を計画した。仮眠を取りながら、撮りながら、海の朝焼けを狙いに行こうと思う。高速道路は無いので、曲がりくねった山道を突き進んだ。景色はいい。交通量は少ない。道路のリズムも最高だ。海に出たのは計算通りに夕刻。そこでも写真を撮った。砂岩の奇岩は最高の被写体と思えたのである。
次は朝焼けだ。海岸沿いに車を走らせ目的地に向かう。仮眠を取って日の出の1時間前に、目的の場所にやってきた。
想像以上の混雑である。岸壁には所狭しに三脚が並んでいた。ここは有名な写真スポットだ。著名なプロも撮っている。皆も日の出と朝焼けを狙っているのだろう。ある程度の人数は予想していたが、それを遥かに超えてきたのである。
『おはようございます』。僕も並びに参加した。あともう少し遅かったら場所はなくなっていたかもしれない。三脚を立ててカメラを固定。ファインダーを覗けば知っている画がそこにはあった。
僕のカメラは67中判フィルム機。この日、付けていたレンズは45mmの焦点距離。フルサイズ換算だと24mmの広角レンズだ。
特に考える余白はなかった。皆が並んでいる場所がベストポジション。構図も上下1:1がよく似合う。ピントはパンフォーカスがいい。絞って撮ることが正解であろう。SSは暗いから相反則不軌の領域。神経質にならずに済む。ハーフNDも挟んでおいた。ミラーはアップしてブレを防ぐ。あとはレリーズでシャッターを切るだけだった。
よく撮れたと思う。お気に入りの1枚にもなった。だが満たされないものもある。考える余白が無かった。詰まらないのである。正解と思われる写真はWebに溢れていた。ベストポジションに着くだけで、その写真は撮れてしまった。なんだかスタンプラリーのような写真とも思えた。
僕は日の出を待たずにそこを後にした。オリジナルがいいのではない。皆と同じが嫌なわけでもない。考えたかったのだ。思考の無い撮影は詰まらない。失敗してもいいから別の場所を探すことにした。
車で少し走ると、海に突き出た岬に着いた。太陽は昇りはじめている。筋状の雲も出ていた。海には岩礁も。広角レンズでは岬に生い茂った緑も映り込んでしまう。それらのすべてでバランスをとった。これもお気に入りの1枚になるだろう。楽しい撮影と思えたのだった。
僕は『僕の思う最高の1枚』を目指して撮っている。だが、その写真がほしいだけではない。撮影の過程も楽しみたいのだ。有名なスポットで撮る写真もいいが、そうではない場所で撮る写真の方がいい。
きっと『僕の思う最高の1枚』も、そう言った場所で撮った写真になるだろう。今回の撮影でそう思った。またひとつ目標に近づけた気もしたのである。