





医療系の研究施設で働いている。僕は短期転勤族だ。数ヶ月後には北海道行きも決まっている。写真好きの僕にとっては願ってもいないチャンスだ。とはいえ写真スキルは低い。故に今は練習に練習を積み重ねている。
先日は海岸沿いの工場地帯へ行ってきた。僕のカメラはフィルム機のハイエンド。購入当初はカメラの覇気に負けて、撮らされている感覚が強かった。最近になって、ようやくその感じもなくなってきたと思う。
故に最初の頃の写真は酷かった。高性能なカメラのおかげで画はきれいなのだが、僕の中ではいろいろと破綻していた。そのときの撮影地も工場地帯。つまり、そのときのリベンジを果たそうというわけだ。
いつもは車だが、この日は電車にした。適当な駐車場が見当たらなかったからだ。いろいろと考えた結果、電車+徒歩が最適と思えたのである。そもそも工場地帯は観光地ではない。それ用の駐車場がなければ、コンビニすらないのである。そのため準備が必要だった。
まずは航空写真を見て撮りたい場所をピックアップ。その点を結ぶように散策路を設定。おおよその必要時間も割り出した。そこから逆算してトイレ休憩のポイントも割り出しておいた。準備は完璧なのである。
僕が愛用している鞄はカメラ用のもの。肩がけタイプだが容量はある。カメラ2台とレンズ4本が入る仕様だ。しかし僕のカメラは67中判フィルム機。でかくて重い。本体とレンズ2本も入れれば満杯だ。重さも2kgは超えている。そのため他の荷物はあまり入れられない。
フィルムは10本。接写リングも念のため。替えの電池と非常用の1万円。硬貨も数枚入れておく。ペットボトルは350ml。雨具はカメラ用にビニール袋1枚。僕用にはタオルを2枚。ハンカチと鼻紙も忘れない。準備は完璧なのである。
撮影は楽しかった。周りには人もいなかったので、ゆっくりと考えながら撮ることができたのである。それにしても工場群はいい。工場萌え。機能美。そのような言葉では説明不足と感じる。
僕はいつも通りに撮った。秩序の淡い部分を撮った。やはりいい。今回は背景となるものはなかった。余計な背景はぼかせばいいと思っていたが違っていた。余計なものは排除した方がいい。また一歩『僕の思う最高の1枚』に近づけた気がした。
調子に乗って別の場所にも行ってみた。『銀座』だ。東京のど真ん中。休日のそこは観光地と言ってもいいだろう。カメラを持った外国人も大勢いる。そこに混ざってみたかったのだ。
7丁目の看板。煉瓦壁。パーキングメータ上の空缶。獅子のモニュメント。ビルの送水口。すべてがきれいだった。僕は僕の写真が好きだ。「写真やってる奴は皆自分の写真が一番だと思っている」。どこかで聞いた話だが、まさにそれだった。やっと僕もその領域に入れたのかもしれない。
調子に乗って『浅草』へも足を延ばした。寺社仏閣はいい。それと仲見世で売られていたポンチョの値札もよかった。僕の写真は止まらないのである。
すこし撮りすぎた感もあった週末。いったいどれくらいの距離を歩いたのだろうか。重たいカメラを持ったまま、座ったのは昼食の吉野家ぐらい。さすがに足も痛くなった。次の日も痛かったので、念のため病院へ。診断結果は腱鞘炎。足の甲は炎症で腫れていた。
やはり撮りすぎていた。実は工場地帯を歩いている段階ですこしの違和感を覚えていた。だが楽しみにしていた撮影日。無理をしてしまったわけだ。
やらかした。仕事にも影響がすこし出た。ここは反省した方がいい。でも後悔はしていない。銀座と浅草の写真に出会えたのだから。写真はおもしろい。足を痛めている場合ではない。僕の写真は止まらないのである。