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タモツの日記
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#4 部長に物申したい

お掃除系の会社に就職した。入社式以来いろいろやらかしたが、社会人生活は順風満帆。「喋らない奴」というキャラも板についてきた。

慣れれば居心地もいい。住めば都。だが、すこしさみしい。とはいえ周りの方々も相変わらず、こんな僕にも気をかけてくれる。それは何もお姉さま方だけではなく、おじさま方もだ。

あとになって思えば、これはきっと聞き役に徹した功績なのだろう。喋れない僕にとって一番に怖いのは無言の間。だから相手には喋ってもらわないと困る。そのため必死に興味を持って聞きまくるわけだ。

相槌も欠かさない。ほー、へー、はー、わー、そー。気持ちよく喋ってくれれば、こちらも助かる。お話を聞くのも嫌いじゃない。愚痴でも文句でもなんでも来いなのである。

営業部の部長にも目を付けられてしまった。「喋らない奴」をいじるのが好きらしい。僕もいじられて悪い気はしない。多少の粗相も新社会人ということで大目に見てもらえてる。周りの先輩には怒られるけれども。

飲みの席でもいじられる。僕はそこでも粗相をしないように必死だ。乾杯は下から。グラスが半分以下になれば注ぎに行く。注文は率先して。飲みの席は忙しい。

部長はタバコを吸う。煙がこちらにやってくる。おもわず手でパタパタとやってしまった。後で先輩に怒られた。やっぱりむずかしい。

ある日部長に誘われた。厳密には僕の上司であるノッポの姉さんに「タモツを借りていいか?」と。

僕に選択肢はなかった。1日部長にお供することとなった。単発の依頼に応えるお掃除部隊に入隊する。営業部の部長もお掃除するとは聞いていたが本当だった。

部長と僕と、もうひとり。肩書は無いが会社の幹部だった。うん千万の和製スポーツカーに乗ってるらしく、社員の希望の星。その3人でのお掃除となった。

なぜ僕が呼ばれたかはすぐに分かった。クリーンルームのお掃除のため、防護服にジェットガンを装備した。僕の仕事は、そのかっこで固まること。そして撮られる。要はモデルだったのだ。誰だか分からない姿だが、会社のパンフレットに載るらしい。

大役を終えてランチへと。ここでも日頃の社会人マナーが試される。おそらく部長のおごりだ。そうでなくとも部長より高いものを食すのはマナー違反と言えるだろう。

「俺はチャーハンでいいや」。部長は言った。それは止めてほしい。部長がチャーハンでは駄目だろう。一番安いものではないか。こんなところで庶民派アピールされても、なんのメリットも無いのである。

もっと高いものにしてほしい。そうでないと僕が部長よりも高いものを食べることになってしまう。後で先輩に怒られる。

結局、僕は仕方なく醤油ラーメンを注文。チャーハンよりも高かった。ほんとはチャーシュー麺に行きたかったが無理なのである。ちなみに社員の希望の星は味噌ラーメンを食されてた。

「ごちそうさまでした」。もちろんお礼は忘れない。「仕事の頑張りで返してくれよ」。望むところだ。でもお願いだから次は肩書相応のものを注文してほしいのである。

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