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椎茸について
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原木椎茸とは?

『原木椎茸』とは原木で栽培した椎茸のことです。 90cm程の長さに切りそろえた原木に椎茸菌を打ち込み、その原木から椎茸を発生させます。

一方、『菌床椎茸』とは原木を細かく砕いたおがくずに「ふすま」や「こめぬか」などの栄養源を添加させ、ブロック状に固めた菌床で栽培された椎茸です。

菌床椎茸は、収穫までの日数が短いこと、ブロックの扱いが容易なこと、自然環境に左右されない栽培方法が可能なこと、 どれをとっても原木椎茸よりも生産効率がいいので、国内の椎茸農家さんの9割以上が、菌床栽培を選ばれています。

基本的には菌床椎茸よりも原木椎茸の方がおいしいと言われていますが、 生産効率を高めた原木椎茸は、手間暇かけてつくられた菌床椎茸に負けてしまうこともあると考えています。 でも、手間暇かけて育てた原木椎茸は、限りなく丁寧に育てられた菌床椎茸にも決して負けません。 やはり、よりおいしく育つ可能性については「原木椎茸」の方が圧倒的に上と考えています。

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椎茸の品質を高めるために

当農園の栽培する原木椎茸は、十勝の原木と気候、地域に根付いた技術で成り立っています。 地道な日々の労力はもちろんのこと、知識と経験に基づいた判断も必要となっています。 そして、椎茸の品質を高めるために以下の項目を大切にしています。

・十勝の寒冷な気候
・美味しさ重視の菌種
・地域に根付いた栽培技法

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十勝の寒冷な気候

椎茸の原産地はインドネシアの高山地帯とされています。 そこと日本の平野部では気候が類似していることから椎茸は全国各地で栽培されていますが、 寒さの厳しい北海道の十勝地方は決して適している地域とは言えません。

十勝の夏は涼しくも、冬は厳しい寒さが訪れる地域です。 そのため、椎茸菌の活動も弱く、露地での榾木育成も、2夏経過の1.5年もの時間が必要となります。 ハウス内の加温環境ならば、9ヶ月で育成を終わらせることも可能ですが、品質を求めるならば時間をかけた育成が必要となります。

十勝の気候では榾木の育成に時間がかかってしまいます。 ただ、この『時間がかかってしまう』ことが十勝で栽培することの最大の長所だと。 寒冷な土地でゆっくりと育てた榾木からは、品質の高い椎茸が採れると考えています。

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美味しさ重視の菌種

5K-16という菌種は、通常品種と比べて、旨味成分の含有量が豊富といわれています。 大きな椎茸を発生させることも特徴のひとつで、優良な品種と言えるのですが、栽培が難しく、栽培農家も年々に減っているそうです。

ただ、当農園では品質のより高い椎茸栽培を目指していますので、この品種を選らばさせて頂いてます。

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地域に根付いた栽培技法

栽培に適していない寒冷地で、栽培の難しい菌種を育てることは難しいです。 そこで重要となるのは地域に根付いた栽培技法でした。 とはいえ、地域に根付いたといっても、基本に忠実な栽培方法で、労力のみならず知識と経験が必要です。

現在は技術革新で昔ほど手間をかける必要も薄れた原木栽培ですが、この土地の多くの栽培者は昔ながらの技法で椎茸を育てていました。 寒冷な気候をメリットとして栽培の難しい品種を育てるには、最新の技術ではなく昔ながらの栽培方法が必要というわけです。

- 原木椎茸の栽培手順 -
美味しい椎茸の育て方
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原木の調達

栽培に使用する原木はクヌギやナラの木。ドングリの実をつける広葉樹。つまり「椎の木」を使います。 椎の木から生える茸(きのこ)が、「椎茸(しいたけ)」というわけです。 ただ、南北に長い日本では、地域によって自生する椎の木の種類も変わるので、椎茸栽培に使用する原木の種類も地域によって変わります。 九州ではクヌギが多く、関東ではコナラ、 そして北海道ではミズナラが多く使われています。

葉っぱの落ちる10月ごろ、北海道の十勝でもミズナラの木の切り出しがはじまります。 原木の太さは直径6〜10cmくらいが理想的なのですが、4〜20cmくらいが許容範囲。 どんな太さの原木でも生まれてくる椎茸の味に影響はないのですが、原木の寿命と扱いやすさを考えると、やはり6〜10cmくらいが理想的です。

そのため、ちょうどいい太さのミズナラの木だけを倒していくのですが、切株は残しておきます。 ミズナラの木には「萌芽更新(ほうがこうしん)」と呼ばれる性質があるので、切株を残しておくと、そこからミズナラの木が再生するからです。 ミズナラの木を倒しても、根は生き残り、森も生き続けます。 また、再び成長したミズナラの木は、しいたけ栽培の理想的な太さになることも多いので、その理由でも切株は残しておきます。 それは理想的な「森の循環」で、つまるところ「原木椎茸」を栽培するということは、今の日本が抱える「里山問題」を解決するひとつの方法でもあります。

ただ、「原木椎茸」の栽培に使う原木は、樹皮がきれいに残っている必要もあります。 原木の中を乾燥から守る役割と、しいたけの元になる「原基」と呼ばれるものがつくられる場所の確保。それらを原木の樹皮は担っています。 そのため、伐採や運搬に重機を使うことはできず、そこにも原木椎茸の栽培の難しさがあります。

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植菌

秋から冬にかけて森から切り出した原木は、春になったら「椎茸菌」を接種させます。 それは「植菌」と呼ばれる作業で、90cm前後に切りそろえた原木に、直径1cmくらいの穴を30個くらい開け、そこに「椎茸菌」を繁殖させた「おがくず」を詰めていきます。

「おがくず」を植菌するうえで、気を付けることは乾燥による「椎茸菌」の死滅です。 「おがくず」は乾燥しやすいため、はやくに「椎茸菌」が原木へ移っていくことを願うのですが、 そのためにすることは、植菌後の原木に散水することと、防湿シートで包んであげること。 植え付けた「おがくず」から原木へと、「椎茸菌」が伸びていくまでは、保湿のためにシートで包んであげます。 これは「仮伏せ」と呼ばれる工程で、植菌直後から原木に「椎茸菌」が充分に伸びるまで行われます。

ちなみに、植菌されたタイミングで、原木は「榾木」と呼ばれるようになります。

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「仮伏せ」と「本伏せ」

「仮伏せ」の適温は17℃。菌の最適な活動温度より少し低めなのは、榾木から栄養を摂るのではなく、菌が伸長する工程だからです。 榾木の中を菌が伸長し、切り口に到達すると、「菌紋」と呼ばれる白い模様が表れます。 それは「仮伏せ」の終わりと、次の工程となる「本伏せ」をはじめてもいい合図です。 風通しよく、適度な湿度を保てるように、森の中に榾木を組んでいきます。

「本伏せ」は、原木の中に「椎茸菌」を隅々まで行きわたらせ、原木を腐朽し養分を摂らせる工程です。 これは原木の「榾化(ほだか)」と呼ばれる変化を促す工程で、そのために行うことは 定期的な散水で乾燥を防ぐとともに原木の中の水を抜くことと、 適度に原木の天地をひっくり返し、椎茸菌の活動を活発化させてあげることです。

森の中なら手間を掛けずとも榾化はすすむのですが、散水と天地返しを行うことによって、よりよく榾化のすすんだ原木、つまり「良い榾木(ほだぎ)」となるわけです。

この散水と天地返しも栽培効率の向上を目指したものなのですが、これだけは味の向上にも繋がります。 ただ、散水と天地返しは、行わなくても「原木椎茸」の栽培はそこそこ出来るので、ついつい疎かになりがちです。 時間も労力も必要ですので尚更。

でも、「仮伏せ」と「本伏せ」で、「原木椎茸」の良し悪しの90%が決まってしまいます。 当農園では、しっかりとした榾木作りのために、これらの工程も疎かにせず行っています。

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自然発生する椎茸

榾化の進んだ榾木からは、春と秋になると、自然に椎茸が生えてきます。 それは春菇や秋菇、自然菇と呼ばれる椎茸で、充分な水分と寒暖差による刺激がきっかけとなって、原木の樹皮を突き破り生まれてきます。 最初は小さな芽のような赤ちゃん椎茸も、あたたかい日が続けば1週間ほどで立派な椎茸へと成長します。

自然な刺激で生まれた椎茸は、美味しいとされる一方で、自然環境下のため、虫が入っていたり、乾燥でひび割れたり雨に濡れて旨味が飛んでしまったりもします。 そのため、自然発生した高品質の椎茸は、希少なこともあり、市場でも重宝されています。

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原木椎茸を強制発生させる方法

原木椎茸は自然発生だけではなく、強制的に発生させることも可能です。 榾木を冷水に浸水させ、冷たさと窒息の刺激を6〜10時間ほど与えることで椎茸を発生させることが出来ます。 浸水の終えた榾木を適切な温湿度の環境に置いておくと、1週間ほどで収穫可能な椎茸が育ちます。 そのため、当農園では季節を問わず一年を通しての収穫が可能となっています。

収穫の終わった榾木をもういちど浸水させると、ふたたび椎茸が生えてきます。 ただ、2〜3回目以降は浸水しても椎茸は生えてこず、次の発生のためには「休養」と呼ばれる工程が必要となります。 高温多湿な環境で45日くらいの間、榾木を休ませ「休養」させます。 定期的な散水も必要で、上手く行うとふたたび浸水刺激で椎茸を発生させることが出来るようになります。

このように、1本の榾木からは何回も「原木椎茸」を発生させることが可能で、上手につくられた榾木は15回以上の収穫が見込まれます。

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森の循環

椎茸が出なくなった榾木は薪となります。 冬の椎茸栽培には暖房が必要となるのですが、その燃料となるわけです。 そして、燃え残った灰は融雪剤として使ったり土壌改良剤として畑に撒かれ土にかえります。 ここまできて「森の循環」は完了となります。