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しいたけ ブログ
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榾木の穴の数に隠された秘密

今年も植菌作業がはじまりました。 残雪の多さから遅れ気味だった玉切り作業。 それも4月の初旬には終わり、そのままの流れで植菌作業に入りました。 本来は4月1日から植菌作業を始めたかったのですが、自然環境の気まぐれには勝てないので、仕方ないと諦めていたわけです。

そんな植菌作業とは、原木に椎茸菌を打ち込む作業のことです。 原木に直径2.7mmの穴を開け、そこに椎茸菌が培養されたおがくずを詰めていきます。 詰めたおがくずは、そのままだと乾燥してしまい、椎茸菌は原木へ乗移る前に死滅してしまいます。 そのため詰め終わった穴には蓋をする必要があるのですが、 「成型駒」と呼ばれるおがくずの塊にはスチロール製の蓋が付いているので、別作業で蓋をする必要が無くとても便利です。

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原木に打ち込む「成型駒」

原木に開ける穴の数は農家さんによって異なります。 植菌作業の目的は原木に椎茸菌を入り込ませること。ゴールは原木の隅々まで椎茸菌が入り込むことです。 それまでには早くても1ヶ月は掛かります。遅いと2ヶ月以上も掛かり、その間に別の菌が入り込んでしまうこともあります。 そのため、早くに椎茸菌が隅々まで入れることを求められるのですが、その手段として穴を増やすという選択肢があるというわけです。 理論上、穴の数はひとつでも良いのですが、 別の菌よりも早く原木の隅々まで入り込ませるため、40個程度の穴の数がスタンダードと思われます。 ただ、穴の数を増やすと『そこから椎茸が発生しやすい』というメリットもあるので、40~60個の穴を開ける農家さんも珍しくありません。

そこへいくと、当農園は原木一本当たり、平均27個の穴を開けさせてもらってます。 「成型駒」ひとつの値段は安いのですが、量が多くなるとその価格も無視はできません。 また、穴を減らすと作業量は減り、この削減量も無視することはできないのです。 ただ、穴の削減のしわ寄せは「仮伏せ」と呼ばれる原木の隅々まで椎茸菌が入り込む工程に及びます。

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穴以外からも発生する椎茸

そのため、当農園では「仮伏せ」を丁寧に進めることで、すばやく椎茸菌が原木の隅々まで入り込むことを促しています。 具体的には、原木を乾燥させずに、一方で徐々に乾燥させていき、最後の仕上げで水を多く含ませます。 なに言ってるのかよく分からないと思いますが、この方法で仮伏せを行うと最速で原木の隅々まで椎茸菌が入り込み、 椎茸の発生量が期待できる強い榾木へと育っていきます。 すると、穴以外から発生する椎茸も多くなるので、ここでもまた穴を削減できる理由が生まれるというわけです。

昔から榾木に打ち込まれた駒の数で農家の栽培方法や運営スタイルが分かると言われています。 当農園の強みは栽培効率です。その証拠が榾木の穴の数にあるというわけです。

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