- SHIITAKE BLOG -
しいたけ ブログ
000
変わらないことの重要性

就農してからというもの、多くのメディアの方に取材をして頂きました。

そこでよく聞かれることは『なぜ移住されたのですか?』という質問。おそらく、期待されてる答えは、熱量のこもった覚悟ある目的。けれども、僕の場合は短期転勤族だったサラリーマン時代の延長戦の意味合いが大きく、そもそも移住自体が楽しい。もちろん、写真をはじめ、確かな理由になり得る想いはいくつもありますが、一番の理由は『移住したかった』だったと思います。

000榾場の広葉樹

観光はもちろんのこと、旅とも違う『移住』という振る舞い。それまでに住み慣れた場所を片付けることも、新天地へ向かう移動も、そこで新しい暮らしを準備する過程も、すべてが移住の楽しさ。腰を据えて住み着くことでしか見えない景色も在ると思います。その土地の良し悪しを知ること。そこで暮らしていくためのちょっとしたコツの発見。郷に従えたときの多幸感。そして、他所との共通項に感じる安心感。そんな様々な刺激を求めて移住したのかも知れません。

きっと、僕は集落を飛び出して新天地へ向かうことに喜びを感じる人。太古の昔から、僕のような人が一定数存在していたから、人類は世界中に散らばったという説も、どこかで聞きました。ただ、僕ら移住者が集落を飛び出せるのも、集落を守る方達が存在していたから。やはり、その土地を耕し守り続ける人達がいたからこそ、ここまで人類は発展したのだと思います。僕には特別な信仰もありませんし、スピリチュアルなことにも疎いですが、ここに限っては生まれながらに与えられた役割みたいなものもあるのかなと思っています。

000栽培ハウス前の森

そう考えれば、移住を望む人とそうではない人の間に優劣はなく、ただただ任された役割が違うだけ。もしもそうならば、その土地に長く住まわれてる方達が望んでいることを、僕が間違って想像していた可能性もあると思います。

過疎化の進む地域に住まわれてる方達が望む未来とは、不安や恐れのない、希望のある未来だと。具体的には、人口が右肩上がりで、平均貯蓄も右肩上がりで、おまけに地域の知名度も上がれば御の字。すなわち、今とは違う町へ変わること。地域おこし協力隊という職業に就いていたときは、そう思っていましたが、実際は『変わらないこと』が一番に望まれる未来なのかも知れません。

日々は変わらず、朝には登校する子供たちの姿があり、いつもの場所で買い物ができ、慣れた家で床につく。夏になったら『今年も暑いね』と、冬になったら『今年もしばれるね』と、そんな話をできるご近所さんがいて。町の祭事を楽しみにしたり、草刈や除雪に精を出したり、咲く花や落ちた紅葉で和んでみたり。そんな去年と変わらない1年を今年も、来年も、再来年もと。

正直、一番に難しい理想と思ってしまいますが、その可能性があることを忘れてはいけないと。なにより、その理想を守ることに協力できる農家で在りたいとも思うのです。

目次へ