- SHIITAKE BLOG -
しいたけ ブログ
000
手渡されたバトンの重み

『プロにならなくてはならない』

組合長さんは仰いました。それは僕が地域おこし協力隊員に就任する前のこと。見学のために新得町を訪れたときに頂いた言葉です。知識をマニュアル的に身に付けるのではなく、平常時はもちろんのこと、異常時にも応用して対処できる武器としての知識を身に付けなさいと。その意味として僕はこの言葉を受け取りました。

000見学で訪れた際に撮った1枚

組合長さんは、僕よりひとまわりも上の方。出身は関西で、進学を機に十勝へ移住されたと聞いています。経験則を大切にされる農家さんが多い中で、組合長さんは理論的な知識を大切にされている方。僕が栽培で失敗したとき、回復の教えを乞うても具体的な手順は出さずに、そうなった理由を淡々と示してくださる方です。自分で考えることが多かったですが、それが結果的に僕の知識と技術を底上げしてくれました。

そんな教えて頂いた栽培技術に違和感を感じたのは、他地域での勉強会に参加したときでした。北海道は大きいと言っても、同じ雪国。けれども、そこでの常識は十勝では通用せず。任意のものが必須であったり。同じ手間をかけても無駄であったり。とても不利な場所で栽培しようとしている事実を、そこで改めて知ることとなりました。

000見学で訪れた際に頂いた椎茸

以前に、組合長さんはこうも仰っていました。その日は組合から卸している会社の広報部の方々との意見交換会。生産物の拘りを聞かれての回答。『量は作れないから良い物を作ろう』と。研修期間を重ねるごとに、その言葉の意味を深く知ることとなりました。

000森で自然発生した椎茸

栽培方法における『理想と現実』に折り合いをつけることが農家には求められます。知識や技術はもちろんのこと、そこに必要なものがプロ意識であり、同時に生まれるものが農園の特色。理想の中の項目の、何を省いて、何を優先させるのか。この町に根付いた栽培技術は、優先させる項目が他地域とは違うと感じてます。それは栽培マニュアルの中では具体的に示せられないもの。この土地に無いものを把握したうえで行う操作に宿るものです。先代から受け継がれてきた栽培方法とは、そういったものと思っています。

000組合長さんの作る椎茸

ただ、そうやって受け継がれてきた流れも、僕で終わってしまう懸念があります。願わくば、次の世代へこのバトンを渡したい。僕が頂いたように。様々なものを満たしてくれるから。

その方法を模索する今日この頃です。

目次へ