就農したての頃、とあるプロジェクトの発足を数人で話し合いました。 町の原木しいたけ栽培文化の再興計画。 このままでは廃退の一途は確実という考えの元で再興戦略案を出し合っていました。
結果から言うと計画は白紙に。 そもそも矢面に立てる人が不在でした。 僕も矢面に立てなかった内のひとり。 やはりプランを出せる人は多くても、プレイヤーになれる人はいなかったというわけです。
これからの農家は主人公になれるプレイヤーが強いと言われている昨今。 小規模農家なら尚更。 そのため僕も少しづつですが、矢面に立つ場面を増やしてプレイヤーに近づこうとしている反面、 プランナー的な役割を果たしているときはどこか居心地も良く感じてしまいます。
本音を言えば裏方でいたい。 前職でもそうした役割が合っていました。 お客さんに「おいしかった」と言われるよりも「喜んでくれた」との言葉の方が嬉しいのも、きっとそのため。 自分がガッツポーズを出すよりも、サポートした相手のガッツポーズを遠目から眺めてニヤッとしたいです。
考えてみれば、僕の作る椎茸も同じ節があると思っています。 裏方ではありませんが、コース料理などのチーム戦になると主役の席には座れません。 やはり肉魚にはもちろんのこと、甘味のある果物や野菜にも勝てません。 どこまでいってもチームを支える脇役だと思っています。
でもそこに悲観的な想いはありません。 僕の作る椎茸は強い名脇役だと思っています。 主役になれる食材を使ったメイン料理が美味しいのは当たりまえと、 その世界戦では脇や縁を固める食材が重要ではないでしょうか。 お通し、前菜、付け合わせに箸休め。 そこで力を発揮できるのが僕の育てている椎茸だと思うのです。
その日の夕食はチキンハンバーグ。大根おろしを乗せて市販のポン酢で仕上げました。 付け合わせは椎茸のソテー。味付けはシンプルに塩のみ。 椎茸の旨味を引き出す程度の塩味にしました。
ハンバーグも美味しいけど、椎茸も美味しい。 けれども記憶に残るのはハンバーグ。それでいい。それがいい。 僕の椎茸は飲食店様にも定期的に卸させて頂いていて、 そこでのお客さんからの椎茸に対する高評価は嬉しいのですが、それがお店への高評価に繋がればもっと嬉しい。 知ればきっとニヤッとしてしまいます。