しいたけ1袋400円。もちろん経費は回収できて、すこしの利益が出る価格。 けれども、それ以上に意味のあるものと気付いたのは、後になってからでした。 終わってみれば、お会計のすべてが現金決済。そこでもお客さんとの「やりとり」が生まれました。 ぴったりの金額だと、4枚を探す時間もやりとりの内。それ以上の硬貨や紙幣だと必ずおつりが必要に。 そこでもやっぱりやりとりが生まれます。
一応、電子決済の方法もすくなからず用意はしておいたのですが、出番はありませんでした。 たまたまかもしれませんが、効率だけを見れば無駄と思える現金の受け渡しも、 農家の産直ブースでは、それも求められている「やりとり」なのかも知れません。
『十勝ファーマーズマーケット2023』に出店を決めたのは、その年の6月のこと。 農園のロゴが完成し、リーフレットとwebサイトは出来たのですが、その届け方を模索した先の選択でした。
イベントブースのまわし方は地域おこし協力隊だったときにひと通り経験をしていて、 任期満了後も一度だけ生産組合の代表として1人でイベントに参加させて頂いた過去があります。 とはいっても、今回は目的の異なるイベント参加。販売に加えて知ってもらうという目的も掲げています。 そのため慎重に行きたいところですが、十勝の夏は短いです。 迷えばあっという間に秋の訪れ。故にまずは出店を決めたというわけです。
イベントまで1ヶ月半。途中からは農作業もいそがしくなる予定。今季のイベント回数は6回。 売上予測からブース作りに掛けられる予算は低め。ブースデザインはイベント全体の雰囲気は壊さないように。 一番の問題点は夏開催なこと。椎茸の収穫量が激減する時期。ここ数年は、猛暑日が続くと市場から椎茸が消えることも珍しくありません。
故に、椎茸が売り切れても、ルーフレットを手にしてもらえるブースが理想。 当初は、欧州で見られるような生産者市場をイメージしたものを作ろうとしていたのですが、 それでは理想から離れてしまうと思い、代わりにハンドメイドの雑貨マルシェで見られるようなブース作りに変更。 それならばと、将来的には本物の雑貨マルシェに参加もしてみようと思い、流用も念頭に入れたブースにしてみました。
そして迎えたイベント初日。場所は帯広の街にある大きな公園。芝生と白樺の大樹がきれいなところ。 イベント会場の脇ではエゾリス達が走り周っていたのですが、それも日常みたいで誰も気にしていないところが印象的でした。
そして僕のブースですが、結論から言うと失敗も多かったと思います。 ブースの裏で袋詰めをしながらの販売を予定していたのですが、予想よりもお客さんが多く、 店頭で対応ができない時間が多かったので申し訳なく。売り上げ的にも機会損失だったと思います。
また、袋も紙のものを用意していたのですが、それだとお客さんは中身が見えず。 それが理由で売れ行きも鈍いと思ったので、途中で透明の袋にすべて交換することに。 すると売れ行きも良くなったのですが、ブース裏での作業も増えて、これも機会損失を生んでいたと思います。
終わってみれば、売り上げは良かったものの、多量の売れ残りも発生してしまいました。 ただ、リーフレットの減り具合は良好だったので、初日にしては合格点だったと思います。
イベント2回目以降は、袋詰めも早朝に栽培所で行ってからイベント会場へ入ることで解決しました。 暑さで収穫量も減ってしまったこともあり、早い段階での完売が続きました。 おかげさまでブース作りにかかった経費も早い段階で回収することができました。 リピートしてくださったお客さんも多く、かなり遠くから僕のブースを目当てに来てくださったお客さんもいらっしゃいました。
完売後もブースの前で足を止めてくださるお客さんは多くいらして、リーフレットの減り具合も初日に続いて良好。 飲食店の方にも話が繋がり、新たな卸先も決まりました。 想定通り、連日、早い時間で完売してしまったことは申し訳なかったのですが、 大きなトラブルもなく全体を通して見ても成功と呼べるものとなりました。
欲を言えば、一年を通してお客さんとは接していたい。やはり伝えることは小さな積み重ね。 今後はそこを考えていきたいと思いました。
ひとまず、出会えたお客さんには、農園の生存確認のための「インスタグラム毎日更新」を用意してあったのですが、それに加えて公式サイトにブログも設置しました。 この文章がそうです。当初は全12話をゆっくり書き綴っていこうと考えていましたが、12話以降も書いてる目的のひとつに、農園の生存確認があるというわけです。
なにより、Webよりも対面の方が実感があってよかったです。 とはいえ、Webの方もやっていかないと。 その想いから秋のクラウドファンディングへと移っていったというわけです。