今は昔、共同出荷をしている生産組合も、当時は冬季の出荷を行っていなかったと聞いています。 通年の出荷をはじめたきっかけは、市場への全量出荷を止めたとき。 直に卸すこととなった小売店様の要望に応える形で、所属する農家さんも冬季の栽培をはじめたそうです。
ハウスの鉄骨は、雪の重さに耐えられるよう直径32mm。加温のためのストーブを設置。 保温のためにハウス内にも骨組みを組んで、3重のビニールハウスへ。発生の見込める榾木の在庫確保のためにハウスを増設。 その他、様々な工夫と苦労があったと推測できます。
当農園も、少しずつですが改良を重ねてきました。 ただ、昨年(2022〜2023年の冬)の施策は失敗。 すでに発生可能な榾木をハウス内に数多く確保したのですが、その榾木は休養のための加温はいらないと思い、普段より低めの温度で管理。 すると榾木は冬眠してしまったようで、発生操作を行っても椎茸はあまり出て来てはくれません。 収穫に影響があったのは2〜4月。その間、組合を経由しない個人出荷はゼロ。 原因は温度不足。休養のための加温は必要なかったかもしれませんが、活動を続けるための加温は必要でした。
温度不足の原因は、ストーブの燃料となる薪の供給不足も少なからずあったと思います。 屋外の薪をハウス内に入れる作業は、2~3日に1回のペース。吹雪の日に当たることもあったのですが、そこは強い気持ちで乗り越えてました。 けれども、どこかで薪の消費スピードを抑えていたのかもしれません。その気持ちが「休養のための加温はいらない」との判断を生み出していたと思います。
故に、今年(2023〜2024年の冬)はハウスの加温体制を大幅に変えてみました。 ひとつは大型の薪ストーブの追加設置。以前に譲り受けた薪ストーブがあったので、これを新たに設置しました。煙突も一回り大きいサイズに変更しました。 もうひとつは、ハウス内の薪置場の増設。発生スペースの一部を冬の間だけ薪置場としました。これで薪置場のスペースは前年比で3倍。 屋外の薪をハウス内に入れる作業も、週に1回ほどのペースで賄えるようにしました。これで天候の悪い日の作業は回避できると思います。
おかげさまで、新しい加温体制は上手く機能しています。 ハウス内の平均気温は以前よりも上昇。朝方の低温も緩和されました。 冬季は発生操作から収穫までに時間が、夏の頃に比べて2倍以上の時間が掛かっていましたが、今年は1.2倍程度で抑えられています。 この記事を書いている12月の中旬は、まだまだ冬のはしりですが、一番に冷え込む1月下旬でも期待できる数字だと思っています。 難点はというと、想定よりも薪の消費スピードが速いこと。 やはり大型のストーブは放熱が多い分、薪の消費スピードも多かったです。 それでも、屋外の薪をハウス内に入れる作業は、前年よりも少なく済んでいるので、問題ないと思われます。
それともうひとつ、強い気持ちが消えてしまうことにも気を付けることにしました。 日が短い北海道の冬。日々の作業もハウス内が中心です。すると心配なのはセロトニン不足。 「幸せホルモン」とも呼ばれている神経伝達物質のセロトニンは、太陽光を浴びることで分泌されると聞きました。 これが不足すると、頑張れる力も弱くなってしまうそうです。
ですので、晴れた日は出来るだけ数分でも太陽光を浴びるようにしています。 散歩したり、写真を撮ったり、雪で遊んでみたり。 これもれっきとした業務のひとつ。
そんなことをしながら、今年も長い冬を越えようと思います。