先日、手作りしたキーホルダーが壊れてしまいました。
ミズナラのつるつるとした樹皮は磨くと美しいので、間伐の際に出る枝を持ち帰り、金具を付けてキーホルダーに。農園グッズの試作品として作りました。オイルケアはしたものの耐久性に疑問が残ったので、しばらく使ってみることにしました。無機質な鍵の束にミズナラが入ることで柔らかい空気を纏う道具へと。試用期間は1年間。さすがに樹皮の美しさは消えたものの、腐ることはもちろんのこと、ひびが入ったり割れることもなく。いつしか愛着も生まれていました。ただ、1年経つ前に農園のグッズ化は見合わせ。低いクオリティと届け方を見出せなかったからです。後に残ったのは、試作品のキーホルダー。それが先日、壊れてしまいました。
思い返せば、このキーホルダーのような撤退と失敗を、就農してからいくつも繰り返してきました。「これからの農家は新しい経営策を構築しなければならない」と、そのような話を何回も聞いてきたので、一旦出来ることはすべてやろうと考えていました。
生椎茸を乾燥椎茸に加工し、6次産業化を目指しました。それをインターネット通販で買って頂くためにブログとSNSを運用しました。組合の名義でイベントにも出展させて頂きました。プレスリリースを出して新聞社や多くのメディアの方々に取材をして頂きました。町の公民館で写真展も行ったのも、この活動の一部だった意味合いは大きいです。グッズとして写真も売り出しました。クラウドファンディングも行いました。直売所もオープンさせました。DMにて飲食店様への営業も行いました。地域振興の一環で、支援学校の生徒さんの受け入れも行いました。けれども、どれも上手くはいかず。最後に試してみたのはWeb3.0のNFT事業。他は経費を回収してすこしの黒字化は達成できていたのですが、NFTだけは完全に赤字。その時点で、できることはやり尽くしたこともあったので、一旦、すべての事業を整理することにしました。
それが去年(2022年)の6月頃のこと。その後は迷走しながらも、翌年(2023年)の4月頃には次の活動方針が定まり今に至ります。
そして、このタイミングで壊れたキーホルダー。そこに意味はないと思うのですが、しっかりと直したいと思いました。このキーホルダーを作った頃に見ていた景色は、今も変わらず僕の脳裏に投影されてます。就農して間もないころ。場所は発生ハウスの薪ストーブ前。外は雪舞う寒い季節。お茶を飲みながらミズナラの枝を切って、やすりで磨いて、金具を付けて。今に思えば、あの頃は時間と心に余裕があったのだと思います。今は仕事が増えて、あの頃の様にはいきませんが、その気持ちのありようは見習いたく。僕にとってはその証にもなっているキーホルダーなので、やっぱりちゃんと直したいと思うのです。