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しいたけ ブログ
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農家にできること

前職は短期転勤族のサラリーマンでした。 「写真が撮れる」と意気込んだ地方転勤だったけれども、あとになって思い返してみれば、記憶に残っているのは、各地で出会った美味しい食べもの。 もちろん、撮った写真も、その撮影地の思い出も、記憶には残っているのだけれども、それと同じくらい、各地の美味しいものが記憶には残っています。

その記憶を紐解けば、美味しさと一緒にあったのは『安さ』でした。 それが美味しさの記憶をブーストさせているのは確かだけれども、1次生産者となった今の僕からしたら、手放しで良い思い出とは言えません。 もしかしたら、その影で生産者さんは泣いていたかも知れないから。 一方で、1次生産者になったからこそ分かったことは、安く売りたいという気持ちの存在。特に対面販売だと顕著。 それらを踏まえると、価格の設定は本当に難しいと感じます。

000明りの灯った栽培ハウス

理想は、稼げるところで稼いで、稼ぐ必要のないところを生みだせること。 けれども現実は、稼げるところを探すことで手いっぱい。 理想の経費から導き出した価格は驚くほどに高いから。 日本の一部の食資源が海外勢に買い負けて、国内流通に乗らないことが問題視されている昨今ですが、それも致し方ないことなのかも知れません。 僕の場合でも、1円でも高く買い取ってもらえるお客さんを大切にすることが、おそらく正解。 それでも、僕は可能な限り理想は追い求め続けたい。 稼げるところを作りつつも、稼ぐ必要のないところも併せて作りたいと、そう思っています。

すこし話は変わりますが、先日、メディアの方に取材をして頂きました。 質問に答えていく中で、たくさん聞いてくださったオフレコな話。 誰かに話すことで頭の中の情報を整理できると、そんな話はよく聞くのですが、この日のそれは顕著。 僕の話は理想の域を脱せられないものが多いと、あらためて知り得ることとなりました。

000榾場の天井

でも、理想を追ってもいいと思ってます。様々な方達に助けてもらっている農園だからこそ。 もちろん、理想論で終わらない実現可能なことは淡々と積み上げていきますが、そこから余力を作って理想を求めるくらいの気持ちは必要だと思うのです。

何を続けたいのか。何を次世代へ繋げたいのか。そして『農家にできること』とは何かを考える。 それは『農家が出来ること』や『農家にしか出来ないこと』だけではなく、『農家にも出来ること』も含むと。 その実行は大変だとは思うけれども、その過程にも農家の幸せはあるかもしれないと。そんなことを思う今日この頃です。

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