上の写真は町が運営する育成牧場で撮った1枚。そこは北海道らしい景色が広がる場所。日本には魅力的な撮影スポットがたくさんありますが、新得町のここは負けず劣らずの絶景が広がる場所だと思っています。
はじめてここを訪れたのは、仕事場へ向かう途中のこと。この景色を横目に、間伐予定地へ向かいました。着いた場所はうっそうとしたミズナラ林。背の高い熊笹と、密集した広葉樹に絡まった蔦で、薄暗く感じる森。約1ヶ月ほど、そこが僕の仕事場となりました。
エンジンパワーの強い山用の刈払機で、熊笹を刈ることからスタート。軽トラの通る道を作っていきます。まずは粗く刈り。次は根元から刈入れ。最後は刈った笹を片付けるように刈る。おおよそ1往復半で森の中の道が完成します。
伐採は、事前にしるしを付けたミズナラだけを倒していきます。伐倒方法は『追い口切り』。チェーンソーで『受け口』『追い口』という切れ込みをつくり、『ツル』を効かせて任意の方向へ倒します。倒した木は、枝を落としながら6尺(180cm)に玉切り。軽トラの荷台に乗せて搬出します。これが間伐の工程。文字に起こせば、スマートに流れそうな作業も、実際は躓きの連続でした。
刈払機での草刈も最初は上手くいかず。熊笹は、笹というよりも細い竹。刈払機の首を左右に振り払うことすら難しい。時間をかけても、作った道は細かったりするのに、燃料の消費量だけは一人前以上でした。木を切るにしても、順番と伐倒の向きで、作業時間は3倍以上にもなります。逆算して効率良く行おうとしても、予定通りにはいかず、無駄に時間と労力を消費する毎日でした。
効率の良い伐倒は、チェーンソーの切れ味で決まります。チェーンソーの刃は定期的に研ぐ必要があって、それは『目立て』と呼ばれているもの。ただ、これが難しく、上手く研いだつもりでも、刃が木に食い込まないことはよくあること。削りかすは粉状で、エンジンも負荷の無い一定音を奏でます。ここでの燃料の消費量も一人前以上。なにより、それが異常だと気付けないことが一番の問題点。最初の頃は『こんなものか』と、時間だけが過ぎていきました。
『切れないなぁ』
そう仰ったのは、もうひとりのお師匠さん。年齢は組合長さんよりも上の方。十勝生まれの十勝育ち。本職で林業にも関わっていた方です。主に、間伐のお作法は、この方に教わりました。地域おこし協力隊に支給されるチェーンソーは『STIHL』社製。このお師匠さんは、御用達な『Husqvarna』社製のものよりも排気音が好きと言うことで、よく僕のチェーンソーを触りに来てました。そこでよく仰っていたのが上記の言葉です。おかげで、僕はそれが異常だということを知れました。いつしか、この言葉を無くすことが目標に。達成できたのは、地域おこし協力隊となって3年目の春。『お、よく切れるなぁ』との言葉を頂けました。
林業は難しいです。言葉にすれば簡単な作業も、実際は小さな知識や技術が無数に必要。練習すれば誰でも必ず出来るようになるものではありません。途中で諦めて、できない人のままでいる方も多数いらっしゃいました。加えて、事業展開も難しいと聞いています。手軽に製作可能なプロダクトが一般のお客様にとって身近な消費物でないこと、それがそう思わせる由縁です。そこへいくと、原木栽培の椎茸は優秀な林業のプロダクト。林業の活性化で解決できる社会問題は多いので、その意味でも原木での椎茸栽培を続けていきたいと思います。